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アメリカの相続税について

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アメリカの相続税とは

米国では、亡くなった人(被相続人=デセデント/decedent)が有していた資産を、その死亡時点で定められた評価方法(時価)で計算し、その資産を他人に移転・承継させる「権利」を課税対象とする制度が、いわゆる「相続税(estate tax)」です。

正確には、米国の連邦税法上、被相続人の死亡時点における「総遺産(gross estate)」を算定し、そのうち控除後の「課税遺産(taxable estate)」に対して税率を適用する形をとります。

また、生前贈与(gift)税と一体化されており、被相続人が死亡前に行った贈与・死後の移転を含め、「贈与+相続」のトータルで課税枠を共有する制度となっています。

この制度は、連邦政府の制度であり、州(state)によっては別の相続税(estate tax)または受贈者課税型の相続税(inheritance tax)を課すところもあります。

相続税制度の目的・意義としては、富裕層の資産移転に伴う税制上の優遇を是正し、累積的な富の世代間移動を抑制する役割があるとされます。

ただし、その負担対象は実質的に非常に富裕な遺産に限られており、一般の相続では該当しない例がほとんどです。

アメリカの相続税の適用対象と基本構造

①アメリカの相続税の適用対象(誰が課税されるのか)

連邦相続税(federal estate tax)は、基本的に以下のような対象に課せられます。

被相続人が米国市民(U.S. citizen)または米国居住者(U.S. resident)である場合、世界中の資産(worldwide assets)が課税対象となり得ます。

被相続人が米国市民・居住者でない(いわゆる非居住・非市民)場合でも、米国にある「米国所在(U.S. situs)」資産(例えば米国不動産、外国人が米国に所有する株式等)が一定額以上あれば、課税対象となる可能性があります。

各州においても「州相続税(state estate tax)」「相続税(inheritance tax)」の適用対象が別途存在し、州税の課税基準・控除額等は連邦税とは別であるため、居住する州/資産所在州には注意が必要です。

②アメリカの相続税の課税構造(どう課税されるか)

課税の仕組みを整理すると、主に次の流れで進みます。

①総遺産(Gross Estate)の計算

→被相続人の死亡時点において所有していた資産(現金、不動産、株式・債券、保険契約、退職口座、車両、家具・家財など)および特定の持分・権利(例えば生前譲渡後も死亡直前に有していた生命保険契約の権利、信託での retained interest 等)を時価で算定します。

この「時価(fair‐market value)」は、被相続人が購入時の価格ではなく、死亡時の価値を用います。

②控除・免除を差し引いた課税遺産(Taxable Estate)の算定

総遺産から、特別控除(marital deduction=配偶者控除、charitable deduction=慈善寄付控除等)や、債務・葬儀費用・行政費用などを差し引いた後の額が課税対象となる「課税遺産」です。

③課税率の適用

課税遺産が、法定の免除(exemption)額を超えた部分に対して税率を適用します。連邦税では40 %が主な最高税率です。

④申告・納付

遺産を管理するエグゼキューター(Executor/相続人指定等)が、所定のフォーム(例:Form 706)を提出し、税額を納付します。

このように、相続税は「死亡時点での資産移転」に着目し、「贈与+相続」を含めた総合的な課税枠(Unified credit/Lifetime exemption)を用いて運用されています。

アメリカの相続税の免除額・税率・控除の現状(2020年代)

①アメリカの相続税の免除額(Exemption)

連邦相続税でまず注目すべきは、課税対象となるために「免除される額(つまり課税されない範囲)」が非常に大きい点です。例えば、2025年時点で、個人あたりの免除額(連邦税)がおおよそ US$13.99 million であるという報告があります。また、配偶者がいる場合、配偶者控除や「配偶者間免除(spousal transfer unlimited deduction)」を適用することで、実質的に世帯で倍額近くの免除が可能です。

将来の法改正の議論もありますが、現在の制度では、この免除額を下回る遺産については税負担が発生しないケースが多く、「ほとんどの相続では課税されない」状況です。

②税率(Rates)

連邦相続税の税率は、課税遺産のうち免除額を超えた部分に対して適用され、最高税率は 40 % とされています。

過去の税率表を見ますと、18 %~40 %の階段制という構造も参照できます。

③控除・特別措置(Deductions & Special Rules)

配偶者控除(marital deduction):配偶者に遺産を遺す場合、その分は相続税課税対象から除外される。このため、生存配偶者への移転は通常は非課税となります。

慈善寄付控除(charitable deduction):遺産のうち、認定された慈善団体に寄付された分は控除対象となり、相続税の課税ベースを下げることができます。

信託・生前贈与・世代スキップ課税(generation-skipping tax:GST)等、富裕層向けの節税対策・制度設計も多岐にわたっており、専門的なプランニングが行われています。

アメリカの相続税の被課税対象となる財産・評価方法・申告期限

①対象となる財産(What is included)

対象となる財産は幅広く、被相続人が死亡時に所有・権利を有していたもの、あるいは死亡直前に譲渡されたものなども含まれます。

(具体例)

不動産(米国内・国外、この点は居住者/非居住者で異なります)

株式・債券・その他金融資産

現金・預金・退職口座(401(k)、IRA等)

保険契約(被相続人が受取人・保険料負担者であった場合)

家財・車両・美術品・骨董品等の動産

信託・生前贈与・持分・死後権利等、法令上含まれる特定の持分・権利も対象になり得ます。

②評価方法(Valuation)

課税時点は被相続人の 死亡時(date of death) となり、その時点での「公正時価(fair market value)」が原則として用いられます。

資産の購入価格ではなく、死亡時点での価値であるため、時価上昇している資産の場合、潜在的な課税ベースが大きくなります。

③申告・期限・手続き

相続税申告書(Form 706)が使用され、被相続人の死亡後9か月以内に提出・納税が求められるのが一般的です(延長申請が可能なケースあり)。
米国歳入庁

また、資産を売却する際や米国所在資産がある非居住者の場合、相続税申告の義務がある場合があります。

州税・相続税・受贈者課税との違い

①州の相続税・受贈者課税(State estate & inheritance tax)

連邦税とは別に、米国各州(State)で「州相続税(state estate tax)」または「受贈者課税(inheritance tax)」を課すところがあります。

「受贈者課税(inheritance tax)」は、遺産を受け取る人が支払う税金であり、連邦レベルでは課税されていませんが、州の制度として存在します。

各州の免除額・税率・課税対象基準は州ごとに大きく異なります。例えば、免除額が非常に低めに設定されている州もあり、連邦免除額を下回っていても州税の対象となる可能性があります。

②州税・相続税・受贈者課税の違いの整理

連邦相続税(Federal estate tax):死亡した人の遺産全体を基に課税。遺産自体が課税主体。

州の相続税(State estate tax):州が課す相続税。連邦の課税基準とは別。

受贈者課税(Inheritance tax):遺産を受け取る者(相続人・受贈者)が支払う税。州によって課す。

→ 受贈者課税では、誰が受け取るか(相続人の親子関係や配偶者か否か)で税率・免除額が変わることがあります。

非居住者・外国人のアメリカ相続税(U.S. estate tax for non-residents/non-citizens)

日本在住・日本国籍の方、あるいは海外で資産を保有する米国非居住者の方にとって特に注意すべき点が「米国所在資産(U.S. situs property)」を通じて課税される可能性です。

非居住者・非米国市民(non-resident alien)であっても、米国にある所有資産(不動産、株式、米国口座、その他 “U.S. situs” 資産)が一定額を超えると、米国相続税の対象となる可能性があります。

例えば、カナダ居住者の場合の解説では、米国資産に対して課税される際、米国市民・居住者用の「統一控除(unified credit)」を按分(プロラタ)方式で適用できる場合があるという説明があります。

つまり、米国財産を所有している外国人(日本人も含む)は、死亡時に米国相続税申告の義務が生じる可能性があるため、あらかじめ“米国所在資産”があるかどうか/その価値がどのくらいか/減税・控除の適用可否を検討しておくことが重要です。

このため、国内(日本)に居住していても、米国に所有不動産や株式を持っている場合には、米国税務の観点から早めのリスク把握・プランニングが望まれます。

アメリカの相続税の計算例:概算フロー

具体例として、シンプルなモデルで連邦相続税の概算流れを見てみましょう。なお厳密な税額は個別状況で異なりますのでご参考としてご覧ください。

モデルケース:
被相続人 A が死亡時点で保有資産(時価)1,500万ドル(US$15 million)を有していたとします。配偶者 B が生存しており、かつ被相続人の遺産を全て配偶者に残す形とします。

総遺産(Gross Estate)= US$15,000,000

配偶者控除適用(配偶者に全額移転)→遺産が全て配偶者に渡るため、連邦相続税課税対象となる部分は配偶者控除後で US$0 という形が理論上可能です。

結果、連邦相続税負担が「0ドル」というケースが成立します(ただし州税・州制度・資産構成・控除等により異なります)。

このように、配偶者控除と高額な免除額があるため、多くのケースで連邦相続税の課税対象にならないという現実があります。

別のケースとして、被相続人 C が死亡時点で保有資産 US$20 million、配偶者控除を使わないか、配偶者がいないという状況を考えます。

総遺産= US$20,000,000

連邦の免除額(仮に US$13.99 million)を差し引くと、課税遺産 ≈ US$6.01 million

課税対象額に対し、最高税率 40 % が掛かるため、概算税額 ≈ US$2.404 million(ただし実際には段階税率・控除等を踏まえる必要あり)

こうした試算をもとに、相続税のインパクト把握が可能です。

アメリカの相続税制度の歴史的背景・制度趣旨

①歴史的変遷

米国における相続税制度は、1916年に現代型の「連邦相続税」が制定されました。

その後、税率・免除額・課税範囲がたびたび改正されており、2000年代以降は免除額の拡大・税率の調整が行われてきました。

近年では、免除額が大幅に引き上げられ、「課税対象となる遺産」が極めて富裕層に限定されるようになっています。

②制度趣旨・論点

相続税制度の大きな趣旨として、「累積富の世代間移転を抑制」「資産の増加が恒常的に税を免れないようにする(キャピタルゲインを免れることを防ぐ)」「公平な課税の観点から高額相続に対して課税負担を設ける」といった点が挙げられます。

対して、制度には「負担対象が少なく税収も少ない」「資産が流動性の低い不動産・事業等であると納税負担が厳しい」「富裕層による節税スキームが多様化している」といった批判・論点もあります。

③相続税を巡る最近の論点・法改正の動向

現在、免除額の引き上げや将来の法改正の議論が進んでおり、2025年以降にさらなる変更が予定されている点に注目されています。

また、富裕層の資産移転手法(信託、グラントアニュイティトラスト、世代スキップ信託など)が高度化しており、税務当局・立法当局ともにその対応を検討しています。

さらに、非居住者・米国外居住者の米国資産保有が増えているため、クロスボーダーの相続税プランニング・申告義務の履行が増えてきています。

アメリカの相続税の対策・プランニングのポイント

相続税を回避・最小化するための典型的なプランニング手法を整理します。もちろん、個別事情(居住地・資産構成・国籍・税条約など)によって適用可否・効果が異なりますので、専門家に確認することを強くお勧めします。

①生前贈与(Lifetime Gifts)

被相続人が生前に贈与を行うことで、相続時点での遺産総額を減らす手法です。贈与税・相続税が連動しており、贈与時点での税負担・将来の相続時点での課税ベース減少を比較検討する必要があります。

ただし、贈与が無税というわけではなく、年間贈与免除額、贈与税の適用、将来的な資産の成長分が依然として課税対象になる可能性もあります。

②信託(Trusts)活用

信託を設計して、死亡時の課税遺産から資産を切り離す手法が富裕層では一般的です。例えば、インタクション トラスト (Intentionally Defective Grantor Trust) 等。

信託の利用には、信託設計・運営コスト・税務リスク・将来の法改正リスクが伴うため慎重な検討が必要です。

③配偶者控除・共同所有資産の最適化

配偶者がいる場合、配偶者控除や共同所有資産の調整を行うことで、課税遺産を減らすことが可能です。

ただし、配偶者控除を使ったとしても、配偶者の死亡時に再度課税対象となる可能性があるため、二次対策(サバイバーシップ対策)も検討が必要です。

慈善寄付・非課税対象資産の活用

遺産の一部を慈善団体に寄付することで控除を受け、課税対象遺産額を下げる手法があります。

また、不動産・株式等の課税ベースが上昇している資産については、「ステップアップ・ベーシス(step-up in basis)」という概念も関係します(死亡時価で取得資産の取得価格(basis)が切り上がる)ので、贈与・相続のタイミング・手法を比較検討する価値があります。

非居住者・米国外資産保有者のための対策

米国資産を所有している日本在住の方などは、米国所在資産が一定額を超えると米国相続税申告義務が発生する可能性があるため、

①所有資産の所在・時価把握、

②米国での控除・条約適用可否、

③非課税となる範囲の確認・申告義務の有無、

④米国と日本の税務・遺産法制の関係(条約・二重課税回避)
等を早めに確認することが重要です。

事業用資産・不動産保有の注意点

事業持株、不動産、農地・林地など時価が変動しやすい資産を保有している場合、死亡時評価・流動性・納税資金の確保・売却タイミングなどを含むプランニングが必要です。

「死亡時に評価が上昇していた資産を売却できず納税資金が不足する」というキャッシュ・フロー問題も起こり得るため、保険(生命保険を遺産税支払い用に活用)や売却タイミング検討なども有効です。

★注意すべきリスク・課題

非流動資産(例えば不動産、美術品、未上場株式など)を多く保有していると、死亡時に評価を巡る争い・納税資金の確保難が生じる可能性があります。

法改正リスク:相続税制度は将来の立法・政策変更の対象となるため、現在有効な優遇や免除が将来も継続されるとは限りません。

国際資産を含む場合、米国・日本・その他国の税務・遺産法制が絡むため、税務・遺産・信託・外国資産・条約対応の総合的な検討が必要です。

税務当局の監査リスク、信託の運営コスト・管理義務、贈与後の資産価格上昇に対する課税回避策の見直しなどが挙げられます。

相続人・受贈者にとって、相続税負担を見込んでいなかったというケースもあり、事前のキャッシュ・フロー・資金確保・納税準備が重要です。

日本在住者/日本資産も絡む視点での補足

日本在住・日本国籍の方が、米国に資産を保有している場合、米国相続税のみならず、米国資産の評価・申告・納税義務発生の可能性があります。

日本国内においても、相続税・贈与税の制度がありますが、米国制度との併用・条約・二重課税回避・資産の所在国の税制が絡むため、米国・日本双方の専門家(米国税理士・米国弁護士・日本税理士・日本弁護士)による検討が望ましいです。

加えて、為替・資産評価・米国所在資産の売却計画・納税資金の準備も、日本円での換算・資金移動の観点から早めに検討すべきです。

例えば、米国所在不動産を所有している場合、死亡時に「米国相続税+州税(所在州)+日本国内の相続税・贈与税」の三重負担のリスクが理論上存在しますので、早期の対策(信託設計・贈与・保険活用・資産所在地の見直し等)が重要となります。

よくある質問(FAQ形式)

Q1. 「ほとんどの相続では課税されない」と聞きますが、本当でしょうか?

はい。連邦相続税においては免除額が非常に高いため、課税対象となるのはごく富裕な遺産に限られています。例えば「課税を受ける遺産が死亡者の1%未満である」といった報告があります。

Q2. 遺産を受け取った相続人が課税されるのですか?

いいえ。連邦相続税は「遺産自体(estate)」に課税されるもので、相続人個人がその遺産を受け取ったこと自体に課税されるわけではありません。ただし、州の受贈者課税(inheritance tax)の適用がある州では、受贈人が税を負担するケースがあります。

Q3. 日本人が米国の株式を持っていたら、相続税がかかりますか?

米国に所在する資産(米国株式、米国口座、米国不動産等)がある場合、米国の相続税の対象となる可能性があります。非米国居住者・非市民の場合、免除額が市民/居住者に比べて低く設定されているか、あるいは按分計算となる場合があります。

Q4. 日本にも相続税があるので、二重課税になりませんか?

日本にも相続税・贈与税がありますが、国際的な資産の移転・相続に関しては、日米間の租税条約・二重課税回避条項・控除制度等を確認する必要があります。米国で相続税を支払ったからといって、日本での相続税が自動的にゼロになるわけではありません。したがって、両国税務・遺産法制を含めたプランニングが必要です。

Q5. どんな資産を持っていたら相続税対策をしないとまずいですか?

例えば、

米国に大規模な不動産を所有している、

米国に居住・長期滞在しており世界資産が大きい、

米国以外にも海外資産がありグローバルに資産を保有している、

事業用不動産・株式・信託等複雑な資産構成を持っている、
といったケースでは、死亡時の課税リスク・納税資金の確保・評価争いの可能性が高くなります。早めの対策が望まれます。

まとめ

米国の連邦相続税制度は、死亡時点での資産移転(遺産)を対象とし、贈与+相続を統合した課税枠を持っています。

免除額が高く、実際に課税対象となるのは富裕層に限られています。

税率は高め(最高40 %)ですが、配偶者控除・慈善控除・信託・贈与といった対策が可能です。

非居住者・外国人が米国資産を持つ場合も、米国相続税の対象となり得るため、クロスボーダー対応・資産所在の把握が重要です。

州税制度・受贈者課税も存在し、州ごとのルールを無視すると思わぬ税負担が発生する可能性があります。

将来の法改正や資産構成の変動・資産評価の上昇等がリスク要因であるため、早めのプランニング・専門家への相談を行うようにしてください。

行方不明のアメリカの相続人調査の方法とは?

国際相続

行方不明のアメリカの相続人調査が必要になる場合とは?

日本において、日本人が死亡した場合の相続人調査は、日本の戸籍をさかのぼることが基本になります。

以前は本籍地ごとに戸籍を請求しないといけませんでしたが、現在は戸籍の広域交付制度により、お住まいの市町村で遠くの本籍地の戸籍も請求できるようになりました。

この戸籍の広域交付制度とは、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書や除籍証明書を請求できる制度です。令和6年3月1日に戸籍法が改正され、施行されました。

但し、相続人が元々日本人であっても、アメリカで長期就労している場合や、アメリカ人と結婚したりした場合は、アメリカ国籍を取得してしまい、戸籍から出て行ってしまっている場合があります。

その場合、戸籍からは相続人であるかどうかが確定できず、遺産分割協議ができないので、行方不明のアメリカの相続人調査が必要になります。

アメリカの相続人調査の基本手順

では、アメリカの相続人調査の基本手順はどうしたらいいのでしょうか?

日本人は知らないことが多いのですが、大前提として、アメリカには戸籍制度がないため、相続人を探すにはアメリカの戸籍を取る、ということは不可能です。そのため、以下のような方法が有効です。

①公的記録の確認(出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書の取得)

②親族や知人への聞き取り

③インターネット検索やSNSの活用

④領事館・大使館への問い合わせ

⑤外務省の「所在調査」サービスの利用

⑥アメリカの公開個人情報調査サイトの利用

⑥現地の日本人会や現地弁護士への相談

実際には、一つの方法でアメリカの相続人調査が完了することは少なく、複数の手段を同時並行的にすすめていくことが必要になります。

アメリカの相続人調査完了後の手続き

アメリカの相続人調査が完了したら、相続人とコンタクトをとり、遺産分割協議と相続手続き証明書の準備を行い、相続登記や銀行の預金相続に必要な書類を提出します。

アメリカの相続人調査の問題点

上記のような手続きがスムーズにいけばいいですが、実際は、そんなに簡単にはいかないのが通常です。

なかなか行方不明のアメリカの相続人が見つからず、時間ばかりが過ぎていき、相続税の申告期限の10カ月がどんどん迫ってきて焦る。。。といった事態も頻繁に起こります。

また、運よく相続人が見つかったとしても、長期間交際がないケースも多いため、コンタクトをしても詐欺か何かかと疑われ、無視されたり、協力を拒否されたりして、手続きが進まないこともあります。

当事務所のサポート

でも、ご安心ください。当事務所は、20年近くにわたり、行方不明のアメリカの相続人調査を行ってきており、多くのノウハウを蓄積してきております。

アメリカの出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書の取得や英文レターの作成や翻訳等を駆使し、何とか相続人を探し当てるサポートを行います。

行方不明のアメリカの相続人調査でお困りの方は、一人で悩まず、行方不明のアメリカの相続人調査代行サポートをお気軽にご利用ください。

【業務報酬(※参考費用)】

1.アメリカの行方不明の相続人調査サポート25万円~(※個別見積もり)

※実費(電話代、メール代、各種官公庁手数料等)は別途となります。

 2.アメリカの相続人調査代行(※簡易調査):6万円~

※実費は別途となります。実務上は、アメリカ在住の日本人やアメリカ人の相続人についてある程度の情報がある場合は、簡易調査で見つかることが多いです。

外国人の相続放棄手続の方法

国際相続

外国人の相続放棄手続きの必要性

近年、外国人の日本への定住化に伴い、外国人の相続の事案が増えています。
外国人の相続においては、財産を相続する場合、日本の不動産の相続手続き、日本の銀行預金の他、海外の銀行口座の相続手続きや海外のファンド、海外の積立保険の相続手続き等、多種多様な手続きが必要となります。
一方で、被相続人に借金がある、あるいは日本に住んでいないから財産の管理が煩わしい等の理由で、相続を放棄するケースもあります。
そこで、今回は外国人の相続放棄の手続き、方法について解説します。

外国人の相続放棄の裁判管轄

外国人の相続のケースでは、まず、どこの国の裁判所で相続手続を行うことができるのかという、国際裁判管轄が問題となります。
日本の法律によると、相続放棄に関しては、被相続人(亡くなった人)の最後の住所や居所が日本国内にあった場合にのみ、日本の裁判所に管轄権が認められるのが原則です(家事事件手続法3条の11第1項)。
つまり、被相続人が外国人であっても、当該外国人が日本在住であれば、相続人の国籍や居住地に関係なく、日本の裁判所に相続放棄の裁判管轄が認められます。
一方で、被相続人が海外居住者である場合には、日本人であっても外国人であっても日本の裁判所に相続放棄を申し立てることは認められないのが原則です。
もっとも、それではあまりに不都合な場合もあることから、被相続人の居住国で相続放棄の法制度がなく、日本で相続放棄の効果を得る必要性が高いと認められる特別な事情がある場合には、例外的な措置として緊急管轄が認められることがあります。
この緊急管轄とは、日本の裁判所に管轄権が認められない場合であっても,外国での裁判手続が法律上又は事実上の原因により著しく困難であるときは,原告(申立人)を権利保護の途絶から救済するために,我が国の裁判所の管轄権を認めることをいいます。
したがって、海外居住者が被相続人のケースで相続放棄を行いたい場合には、まずは上記の緊急管轄が認められるかどうかの検討が必要です。

外国人の相続放棄の条件とは

では、被相続人の外国人が日本に居住してそのまま亡くなっており、当該外国人について日本の裁判所の管轄が認められる場合、当然に日本の相続法を適用して相続放棄ができるでしょうか?
この点については、まず、日本の法律である「法の適用に関する通則法」は、相続については被相続人の本国法を適用する(同法36条)と定めています。
したがって、例えば被相続人がアメリカ人の場合は、その本国法である米国法が適用されることが原則です。ただし、例外はあり、その本国法である外国法が「相続については被相続人の居住地法を適用する」と定めているような場合、日本法が適用されることになります(これを反致といいます)。そこで、外国法で反致についての規定があるかの調査が必要となります。

海外居住の元日本人である外国人のの相続放棄手続き・方法について

では、生まれた時から外国人であった方の相続放棄手続きではなく、アメリカ国籍等外国の国籍を取得して海外に居住する元日本人の方が日本で相続放棄をするパターンの場合、どのような手続となるでしょうか?
この点、日本国籍を持っている人が外国籍を自分の意思で申請して取得した時には、国籍法第11条1項の「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」という規定により、法律上は外国籍を取得した時点で、「自動的に」日本国籍を喪失します。
ただ、相続人が日本国籍を喪失し、外国人となっている場合でも、裁判管轄や裁判所での相続放棄の手続は相続人が日本在住の日本人の場合と違いはありません。
もっとも、日本国籍を喪失した元日本人は戸籍から除籍されるため、戸籍のみでは相続人でることを証明できませんので、宣誓供述書(AFFIDAVIT)などの書類を別途用意することにより相続関係を証明する必要があります。

外国人の相続放棄手続き・方法についてのまとめ

上記のように、外国人の相続放棄の場合、国際裁判管轄はどこなのか、適用される法律はどの国の法律かの問題、その他実際の相続放棄の手続きについての必要害類の内容など、被相続人と相続人全部が日本居住の日本人の場合とは異なり、事案ごとに様々な複雑な問題が生じます。 そのため、相続人が自分で手続きを進めていくことが困難なケースが多くなります。
でも、ご安心ください。
当事務所は外国人の相続放棄に精通した司法書士、弁護士等の国際業務に強い専門家とともに、外国人の相続放棄をサポートいたします。
外国人の相続放棄でお困りの方はどうぞお気軽にご相談ください。

カンボジアの相続手続き・方法

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カンボジアの相続手続きが必要となる場面は?

カンボジアの相続手続きが必要となる場面の典型例としては、カンボジアで駐在員をしていた際に、カンボジアで銀行口座や不動産を購入し、そのまま帰国し、死亡したような場合があります。
しかし、当事務所に持ち込まれるカンボジア相続の案件の多くが、日本在住の日本人が、アクレダ銀行、プノンペン商業銀行、カナディア銀行などのカンボジアの銀行に米ドル預金をして、そのまま亡くなってしまったようなケースです。
これは、カンボジアでは米ドルの預金金利が高く、米国の預金金利が1%のころでもカンボジアの銀行で預金すると5%程度の金利がついていたため、このような情報を知っている日本人がカンボジアに行って預金口座を開設していたためです。

カンボジア相続法はどんな法制なのか?

相続法制には、大きく分けて包括承継主義(債権・債務をまとめて相続)と管理清算主義(債務を清算後に相続)があります。日本は被相続人死亡(相続)時から原則として被相続人の債権・債務をまとめて相続する形態をとっており、包括承継主義を採用しています。また、カンボジア民法も日本民法同様、包括承継主義を採用しています。
したがって、日本同様、カンボジア人がカンボジアで死亡した場合、原則としてその相続人は被相続人の債権債務を承継します。
ただし、日本民法とは異なる規制もあります。外国人の土地所有が原則として自由な日本とは異なり、カンボジア憲法は、外国人の土地の所有を禁じています。
これを受けて、カンボジア民法は、相続人がカンボジア国籍を有していない場合には、その相続人は土地を相続することができないと規定しています。
例えば、カンボジアにたくさんの土地を持っていたカンボジア人の父が亡くなった場合、日本人の母は外国人なので、夫が所有していた土地を取得することはできません。
この場合、原則としてカンボジア国籍の子や親、兄弟姉妹がこれを相続するということになります。

カンボジア相続法で相続人は誰になるのか

親子兄弟姉妹や配偶者等の家族のうち、誰が相続人になることができるかについては、以下のように定められています。

まず、配偶者は常に相続人になることができます。
そして第一順位の相続人が子、第二順位が親、そして、第三順位が兄弟姉妹とされています。
つまり、カンボジア相続法においても日本の相続法と同様、子や配偶者は常に相続人になることができますが、親は直系卑属が全くいない場合、兄弟姉妹は直系尊属(親)と直系卑属(子や孫)が全くいない場合にのみ相続人になる資格があります。

日本とカンボジアの法定相続分の違い

では、法定相続分についてカンボジアと日本ではどう違うのでしょうか。
実際、法律が定める相続できる割合(法定相続分)は、カンボジアと日本では大きく異なります。
カンボジアの場合、法定相続分は以下のように定められています。

①配偶者と子が相続人であるケース

→配偶者と子が全員で均等に相続

②相続人に子がおらず、配偶者と父母(合計3名)が相続人となるケース

→3分の1ずつ均等に相続

※父母の内どちらか一人しか生存していないケース(相続人2名)では半分ずつ均分に相続します。

③子や直系尊属がおらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人となるケース

→配偶者が半分、残りの半分を兄弟姉妹で均等に相続

上記からすると、日本の相続法に比べ、カンボジア相続法における配偶者に対する保護は、日本と比べ、低いように思われます。

これだけではわかりにくいかもしれませんので、例を挙げながら日本の相続法と比べてみましょう。

1.妻と2人の子が相続人となるケース(相続財産が1億2千万円の場合)

日本では、法定相続分はそれぞれ、妻が半分(6千万円)、子が4分の1ずつ(3千万円ずつ)となります。一方、カンボジアでは妻が3分の1(4千万円)、2人の子共に3分の1(4千万円)ずつとなります。

2,妻と夫の両親が相続人となるケース(相続財産が1億2千万円の場合)
日本では、妻が3分の2(8千万円)、夫の両親が6分の1(2千万円)ずつとなります。
一方、カンボジアでは妻が3分の1(4千万円)、夫の両親共に3分の1(4千万円)ずつとなります。

3.妻と2人の兄弟が相続人となるケース(相続財産が1億2千万円の場合)

日本では、妻が4分の3(9千万円)、夫の兄弟が8分の1(1500万円)ずつとなります。
一方、カンボジアでは、妻が半分(6千万円)、2人の兄弟が4分の1ずつとなります。

上記のように、同じ関係の相続人であったとしても、多くの場合、配偶者の相続分は日本の場合よりもカンボジアのほうが少なくなります。

カンボジアの相続手続き・方法

カンボジアでは、相続開始から1か月経過した後、共同相続人が遺産分割のための協議を開始することができます。
そして、遺産分割について、共同相続人間に協議が整わないとき、または、協議をすることができないときは、各共同相続人は、その遺産分割を、カンボジアの裁判所に申し出ることができます。
形式上はそうなのですが、日本人がカンボジアの銀行口座を持っていて、日本で死亡した場合、カンボジアの銀行は多くの場合、カンボジアの裁判所を通じた手続きを要求してきます。
そのため、カンボジアの弁護士を雇って裁判所を通じた手続きをせざるを得ないことが多くなります。
したがって、実務上は、日本で遺言や遺産分割協議書があったとしても、費用、時間がかかるのが通常です。

当事務所のサービス

当事務所では、カンボジアの相続手続きや方法がわからずお困りの方のため、現地弁護士と提携し、カンボジアの相続手続き代行サービスを行っております。

カンボジアの相続手続きでお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

(参考価格)

カンボジア銀行相続手続き代行サービス:50万円~(※個別見積もり)

(※対応可能な銀行:アクレダ銀行、プノンペン商業銀行、カナディア銀行等)

外国法調査代行サービス

国際相続

外国法調査が必要となる場面

最近、ビジネスの国際化による国際取引の増加や国際相続案件の増加に伴い、手続きの際に、外国の根拠法を提出することが求められることが多くなっています。

例えば、被相続人がアメリカ人で、日本に銀行預金を残したまま死亡した場合、相続人が誰かを確定するには、「被相続人の本国法」つまり、米国法を見る必要があります。

そして、米国は州により法律が違いますが、例えば米国カリフォルニア州法が適用される場合、カリフォルニア州の州法を確認し、誰が相続人かを確定する必要があります。

しかしながら、例えばカリフォルニア州の法律は当然に英文でかかれていますし、また膨大な条文の中から相続に必要な部分の条文を見つけてきてそれを翻訳する必要があります。

これを遺族の方が自分で行うのは、難しいことが多いのではないでしょうか。

また、海外に進出する場合、現地での法人設立関連法規や労働関係法令についての調査等は必須です。

しかし、現地のコンサルタントは「現地の法律ではこうなっている」というばかりで、「本当にそうなの?」と疑問がわくことも少なくありません。

このような場合に、よく調べずに手続きを進めた場合、後で困ってしまうことにもなりかねません。

そこで、当事務所では、そのような問題でお困りの方のため、「外国法調査代行サービス」を行います。

「銀行から外国法を調査するよう言われた」

「海外のエージェントやコンサルタントが言っていることに疑問がある」

等の場合、当事務所で法令を調査し、現地法にどのような条文があるかを報告書にまとめ、ご報告いたします。

外国法調査でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

当事務所のサービス

外国法調査代行サービス:5万5千円~(※個別見積り)

※業務内容は各種法令の調査とレポートとなり、法令の解釈や適用に関する助言は行いませんのでご注意ください。

タイ人の相続手続きや遺言手続き・方法

国際相続

タイ人の相続手続きについて

日本では、タイ人と国際結婚している日本人も多くいらっしゃいます。このようなカップルの組み合わせとしては、日本人夫とタイ人妻が多いです。

タイ人と日本人夫婦の場合 、相続は亡くなった人の国籍の法律で考えることになります。

例えば、日本人の夫が亡くなって相続が発生した場合、日本法に基づいて判断します。

一方、タイ人の妻が亡くなって相続が発生した場合、まずはタイ法に基づいて判断します。

タイ法では、相続される動産 (金銭を含む不動産以外の全ての財産 例:銀行預金や株式、投資信託等)は死亡時の住所地の法律が適用されます。

そのため、タイ人の妻がタイで死亡した場合はタイ法、日本で死亡した場合は日本法が適用されます。

また、相続される不動産が日本にある場合 、タイ国法の定めにより、日本国法が適用されることになります。

ただし、タイにある不動産については、相続財産に含まれるとしても、日本人が所有権登記できない場合があるので、注意が必要です。

タイ人の遺言手続きについて

日本人が日本の公証役場等で遺言を作成する場合、日本法に基づき遺言が作成されます。

一方、タイ人が遺言を作成する場合、タイ国法に基づき遺言が作成されます。

ただし、タイ国法によると、遺言書の作成場所が日本である場合 、日本国の方式により遺言を作成ます。
もっとも、遺言書の効力および解釈は死亡当時の住所地の法律による、となっております。
そのため、タイ人が遺言を残して死亡した場合、遺言書の効力および解釈は死亡時の住所が日本の場合は日本法、死亡時の住所がタイの場合はタイ法が適用されます。

まとめ

日本人とタイ人の夫婦の場合、日本とタイの双方に財産があるケースも多くあります。

また、財産の種類も、日本の銀行預金のみでなく、タイのコンドミニアムやタイの株式、投資信託の他、世界各国に投資しているようなケースも多々あります。

そのため、日本人同士の夫婦の場合より、遺言、相続手続きは複雑化しやすく、難しいという印象を受ける方が多いようです。

当事務所では、国際相続、遺言を専門とする事務所であり、タイ人のカップルの遺言、相続手続きをサポートしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

アメリカ在住日本人の相続手続の方法

国際相続

ニュ-ヨークやサンフランシスコ、シアトル等、アメリカに在住している日本人は数多くいます。

そして、日本にいる父が亡くなり、相続人は日本在住の母と妹、そしてアメリカ在住の兄、というようなケースがあります。

このような場合に、父名義の銀行預金や不動産の相続手続をするためには、どうしたらよいですか?という質問を受けることがあります。

この場合ですが、まず、遺言の有無を確認します。

遺言書があれば、原則的には遺言書の記載が優先します。

一方、被相続人である父が遺言書を作成していない場合、遺産分割協議書の作成が必要となり、作成した遺産分割協議書の内容に沿って遺産分割がなされます。

そして、遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印をし、印鑑証明書を添付する必要があります。

ここで、全員が日本在住の場合、印鑑証明書を添付することは特に難しくありません。

しかし、アメリカ在住の日本人の相続人は、日本国内に住所がないため、印鑑登録ができませんから、印鑑証明書を提出できません。

では、このような場合、どうしたらいいのでしょうか?

この場合、印鑑証明書に代えて、「署名証明書」というものが必要となります。

大きく分けて、アメリカ在住の日本人が印鑑証明書の代わりに署名証明書を取得する方法は下記の3通りあります。

①アメリカ国内の日本大使館又は日本領事館で領事から署名証明書を取得する
②アメリカ国内の公証人役場で、公証人から署名証明書への認証を受ける
③日本の公証人役場にて、遺産分割協議書に署名し、公証人の署名認証を受ける

実務的には、アメリカ在住の日本人が遺産分割協議のために来日している場合は③、それ以外は①か②となります。

「なーんだ、だったら大して大変じゃないじゃん!」と思うかもしれませんが、アメリカの広さをなめてはいけません。
実際には、広大な国土のアメリカは物理的に住んでいる近くに大使館や領事館がない場合も多く、近くに公証人がいない場合もあり、思いのほか労力がかかる場合も少なくありません。

また、銀行預金の相続の場合で、アメリカ在住の日本人が相続財産を受け取る場合はややこしいです。

この場合、海外送金は受け付けないという金融機関もあります。

また、日本の銀行口座があり、そこに送金するとしても送金先が「非居住者用口座」になりますので、海外送金扱いとみなされ、余分な資料が必要となることもあります。

その他、父と子供がアメリカの不動産を共同名義で所有していたり(ジョイントテナンシー JOINT TENANCY)、父がアメリカの銀行口座預金やアメリカの証券会社に株式や投資信託等を残して亡くなったような場合はさらに遺産相続手続きはさらに複雑になります。

このように、日本人であっても相続人の一部の方がアメリカなどの海外に在住している場合、日本在住の日本人のみが相続人となる普通の相続手続とは違う手続きが必要となりますので、国際相続を専門とする事務所にご相談されつつすすめることをおすすめいたします。

当事務所では、15年以上にわたり、難易度の高い国際相続案件を多数こなしてきておりますので、相続人の一部の方がアメリカなどの海外に在住している場合等の相続手続きのサポートが可能な国内有数の事務所であると言えます。

国際相続でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

フランス人の相続手続き代行サポート

国際相続

フランス人の相続手続きの準拠法はどうなるのか?

日本でフランス人が日本人と結婚して長期に日本で生活し、日本でフランス人が死亡し、相続が発生するようなケースが増加しています。

フランスの相続手続きについて、まず、フランス人の日本における遺言がある場合ですが、基本的には日本で、日本民法に従った遺言がなされていれば遺言は有効です。

遺言については,ハーグ国際会議の「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」(1961年10月5日発効)があり、この条約にはEU加盟の主要国や日本も加盟しております。

また、EU相続規則は,遺言の方式が作成された国の法に適合している場合には,その遺言の方式は有効である旨を定めています。

そのため、日本に就労ビザや永住ビザ等で居住するフランス人は,日本民法に従った遺言をしておけば,遺言は原則として有効となり、それを前提として相続手続きを進めていく形となります。

遺言がない場合のフランス人の相続手続きや方法について

次に、遺言がない場合どの国の法律が適用されるかが問題となります。

この点については、下記のように、「EU相続規則」により決することになります。

EUは,2015年に,EUの相続規則「(REGULATION(EU)No 650/2012 OF THE EUROPEAN AND OF THE COUNCIL of 4 July 2012 on jurisdiction, applicable law, recognition and enforcement of decisions and acceptance and enforcement of authentic instruments in matters of succession and on the creation of a European Certificate of Succession)」(以下「EU相続規則」といいます。)を施行しました。

このEU相続規則によれば,相続に関する準拠法は,原則として,「被相続人が,その死亡時にその常居所を有していた国の法」と定められております。

そのため、日本に最後の常居所を有していたフランス人の相続については,原則として,日本法が準拠法となることになります。

ただ、これには例外があり、例えば、被相続人は,相続の準拠法を定めたい場合は、その選択時の本国法または死亡時の本国法を選択することになっています。

従って,日本に長期に居住するフランス人はフランス法を準拠法としたいときには,遺言でフランス法を選択することが可能です。

一方、遺言に準拠法の記載がない場合、上記の場合においては、準拠法は日本法になります。

総括

以上より、日本に長期居住するフランス人が遺言をする場合には,日本民法に従って遺言をしておけば,形式上はその遺言は有効です。

また、日本に長期居住するフランス人が遺言をせずに死亡した場合には,原則として,日本法に従って,その相続手続きは処理されることとなります。

以上の結果から、例えば日本に長期居住するフランス人が死亡し、日本の不動産や日本の銀行預金の相続手続きを行う場合、多くの場合、日本法に基づき処理が行われることが多いと思われます。

なお、当事務所では、フランス人の相続手続き代行サポートを行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

アメリカの相続手続き代行サービス

国際相続

アメリカと日本の相続手続きの違い

日本は相続に関して、相続人の死亡によって、死亡と同時に全ての財産と債務は直ちに相続人に承継されると考えます。これを難しい言葉で「包括承継主義」といいます。「包括承継主義」を採用している国は、日本のほかにフランス、ドイツなどがあります。

一方、香港、シンガポール、アメリカ、イギリス、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランドなどいわゆる英米法系といわれる国々は相続人の死亡によって、その全ての財産と債務は直ちに相続人に承継されるわけではありません。

ではどうなるかというと、アメリカの相続では相続人の死亡により遺産はいったん「人格代表者(Personal Representative)」の管理下に入り、清算手続きを経た後に相続人に分配されることになります。つまり、相続財産は死亡した後しばらくは宙に浮いた状態になります。これを難しい言葉で「管理清算主義」といいます。

「管理清算主義」では、この清算手続きは裁判所を通じた手続きとなり、「プロベート(probate)」と称されます。

上記の「人格代表者(Personal Representative)」という概念がわかりにくいと思いますので少し補足します。

「人格代表者(Personal Representative)」とは、アメリカで相続手続を実施する者のことで、相続人等からの申請に基づき、アメリカの裁判所が任命します。人格代表者は相続人の代表者1名が選任されることが多く、日本人の場合は通常人格代表者からアメリカの弁護士に委任し、アメリカの弁護士が実際の処理を行うことが多いです。

上記の人格代表者が行う清算手続きは、遺言の確認、相続人や相続範囲の確定、債務の清算、相続税の支払い等、相続に関するあらゆる手続きを含んでおり、これらの清算完了後の残余財産が相続人に移転分配されることになります。

手続きの便宜上、日本でも相続人代表を選ぶことがありますが、これはあくまで相続人全員から委任されるものであり、裁判所が選任するものではありません。

上記を見ると、「アメリカに不動産や銀行預金などの財産を残して死亡したら大変そう。。。」と思われるかもしれません。

たしかに、一般的にはそう言えると思います。

一方、アメリカにおいても、すべての相続手続きについて上記のような相続裁判手続き(プロベート)を必要とすると、アメリカの弁護士費用や裁判にかかる時間が膨大となり、不都合です。

そのため、すべての相続手続きについて上記のような相続裁判手続き(プロベート)が必須なわけではありません。

州により異なりますが、アメリカでは多くの州で、約10万ドル未満の預金についてはプロベートが免除されていたり、簡易なプロベートで足りることが多いです。一方で、不動産については、額を問わず、プロベートが必要とされることが多いです。

そして、アメリカでは各州法によって具体的な相続の手続きを定めていますので、州や財産の種類により手続きは異なります。

そこで、まずは関係する州の取り扱いについて事前にしっかり調べた上で、手続きをすすめる必要があります。

アメリカの相続におけるプロベイトの留意点

では、アメリカの相続裁判手続き(プロベイト手続き)の特徴はどのようなものなのでしょうか?

一般に、米国の相続手続きにおけるプロベイトには次のような特徴があります。

(1)米国の相続財産の利用・処分が一定期間制限されるおそれがある
(2)米国の複数の州に不動産がある場合、州ごとにブロベイトを行う必要がある
(3)相続人や相続財産についてのプライバシーを確保できない
(4)プロベイト手続きの弁護士費用が高額となる

以下、それぞれについて説明します。

(1)米国の相続財産の利用・処分が一定期間制限されるおそれがある

プロベイト手続きが行われている期間中は、相続財産は裁判所の監督の下で管理され、原則、相続人が自由に利用・処分することはできません。
したがって、例えば、カリフォルニア州のコンドミニアムを相続した相続人が、自分は利用しないからという理由で物件を処分したくても、相続人はプロベイトが終わるまで自由に売却することができない可能性が高いです。そのため、遺産分割や相続税の納付にかかる資金を一時的に相続人が立て替える必要があります。

(2)米国の複数の州に財産がある場合、州ごとにプロベイトを行う必要がある

米国では州ごとに法律が違い、原則として相続手続きはその財産所在地の州の法律によって行われます。

そのため、複数の州に財産がある場合は、それぞれの州でプロベイトを行う必要があります。

また、弁護士活動も州ごとの資格が必要なので、多くの場合は弁護士を複数雇ってプロベイトを並行的に進めなければなりませんが、その場合は当然費用もプラスでかかります。

(3)相続人や相続財産についてのプライバシーを確保できない

一般に、アメリカのプロベイト手続きでは債権者等に広く相続の事実を知らせるため、遺言書や遺産内容、相続人の情報が公開されます。米国の有名人の遺言書がネット上で閲覧できるのはそのためです。

そのため、日本の相続のように相続人や相続財産についてのプライバシーを確保できないという問題があります。

ただし、一部の州では遺産の明細を公開しないようになっているところもあります。

(4)プロベイ卜手続きの弁護士費用が高額となる可能性がある

米国の多くの州では、弁護士報酬はタイムチャージ制の報酬となります。

ただし、カリフォルニア州など一部の州では、弁護士報酬が法律によって遺産の額に応じて定められているところもあります。

いずれの場合も、プロベイト手続きの費用は終了までに時間と手間がかかる上、日本人の場合さらに高額になることも多いため一般的に高額になりがちです。

一般的には1万ドル~2万ドル程度の報酬はかかるとみておいたほうがよいかと思います。

米国での相続手続き一般における留意点

次に、米国での相続手続き一般における留意点についてどのようなことがあるのかについて説明します。

(1)日本の遺産分割協議に基づく分配が米国側で認められない可能性がある

日本人が死亡した場合の相続については、被相続人の本国法が準拠法となります。そのため、例えば米国にある不動産については、たとえ被相続人が日本人で日本の法の適用に関する通則法では準拠法が日本法でも、実務上、米国の国際私法に基づき、不動産が所在する州の法律を準拠法として相続手続きが行われる可能性が高くなります。

その場合、当該不動産の相続について、たとえ相続人の間で遺産分割協議が調っていたとしても、その分配方法がアメリカの州法の定めと異なっている場合は、遺産分割協議は、法定相続または遺言書によって取得した相続権を相続人同士で譲り合うための合意書として扱われるでしょう。

したがって、相続放棄による分配変更の場合を除いて、税務面でも、相続人同士での贈与扱いとなる可能性があり、場合によっては相続人に贈与税が発生する場合もあります。

さらに注意が必要なのは、日本とは異なり、米国の贈与税は受け取る側ではなく、贈与する側にかかる税金であることです。米国では遺産の権利を他の相続人に譲って自分は何も受け取らないのに、贈与税の申告や支払いだけを行わなければならない可能性があります。

なお、アメリカでは被相続人の死後9カ月以内であれば、部分的または全体の相続放棄の手続きを行うことによって贈与税の発生を防げるので、そのタイミングにも注意する必要があります。

また、例えばハワイ州のように、動産・不動産の種類に関係なく、州法(Hawaii Revised Statutes Section 560: 3 -912) により相続人間の遺産分割協議書(Family Settlement Agreement)に基づく分配を認めているところもありますが、この場合も、前述した贈与税の問題がないかについて、別途留意が必要です。

(2)プロベートには費用と時聞がかかる

実務的には、これが一番の問題かと思います。

日本の相続手続きとは違い、米国の相続手続きの完了には、プロベイトの有無にかかわらず、通常相当の時間がかかります。

これは、仮にプロベイトを回避して他の方法で相続手続きを行った場合でも、通常税務申告や債務の清算は必要であり、更には税務当局による申告書の確認作業を経た上で初めて財産の分配が認められるからです。

そのため、プロベイトを担当した弁護士とは別に、現地会計士の介在が必要であり、そのための費用も必要となります。
なお、遺産の内容や額によっては税務申告が不要となり、比較的早く手続きが終わる場合もあります。

一方、税申告が不要でもプロベイトが必要となるケースもありますので、注意する必要があります。

アメリカの相続手続きの流れ

では、具体的にアメリカの相続の一般的な流れはどのようになるのでしょうか?

以下順に見ていきます。

①被相続人の死亡

②検認手続きの開始

故人が死亡前に遺言をした場合、被相続人の財産は裁判所の監督の下で遺言検認手続きを経ます。

この遺言検認手続には、資産の価値を決定して特定し、税金と請求書を支払い、それが相続人に渡されるまでの手続きが含まれます。

③遺言と遺言の検認

遺言のある人が死亡した場合、ほとんどの州法では、遺言検認裁判所にできるだけ早く提出することが義務付けられています。

場合によっては、遺言検認の申立書と遺言とともに死亡診断書が必要になることがあります。

遺言が存在しない場合は、相続人は州法によって決定されます。

④遺産管理人または遺言執行人の任命

裁判官は、遺産管理人または遺言執行人を任命する必要があります。

上記の者は、故人の財産を解決するための検認手続きを処理します。

遺言執行者は、遺言執行者の名前が遺言に記載されている場合、遺言によっても任命される場合があります。

遺言が存在しない場合、裁判所は近親者を遺言執行者として任命します。

これは通常、生き残った配偶者、長男、または成人した子供です。遺言執行者として任命されることを断ることもできます。

この場合、裁判所は他の誰かを選択する必要があります。遺言執行者が任命されると、その遺言執行者は裁判所から「遺言執行状」を受け取ります。

この「遺言執行状」は、遺言執行者が相続人に代わって手続きすることを許可する法的文書となります。

⑤故人の資産を見つける

遺言執行者の最初の仕事は、遺言検認の過程で遺言執行者を保護するために、遺言執行者が相続財産を見つけることです。

この作業は、特に故人によって公表されていない資産がある場合、困難な場合がありますが、銀行の残高証明書や納税申告書、保険証券などの文書を確認することで調査するしかありません。

また、不動産が差し押さえられないように注意し、住宅ローン、保険、税金の支払いをする必要があります。

⑥相続財産の死亡日の価格を調べる

遺言執行者はアメリカの銀行預金やアメリカの不動産等の財産の死亡日の価格を調査、決定する必要があります。
これは、財産の死亡日の価格が相続税などの基準になるからです。
不動産については、一部の州では、不動産鑑定士が裁判所によって任命される場合がありますが、他の州では、遺言執行者が鑑定士を選択することを許可しています。
遺言執行者は、故人が残したすべての財産を記載した法的文書を提出する必要があります。各項目には、資産価値と、その価値がどのように決定されたかを示す注記が必要です。

⑦債権者への通知

故人の債権者は、直ちに死亡を通知する義務があります。ほとんどの州では、遺言執行者は、債権者に死去を知らせるために地元の新聞に死亡通知を掲載する必要があります。

これらの債権者には、残りの不動産に対して請求を行うための限られた時間が与えられます。ただし、遺言執行人は、債権者からの請求を拒否する権利を有します。遺言執行者が債権者からの請求を拒否した場合、債権者は、裁判官がそのような請求の有効性を決定できるように裁判所に求める権利もあります。

⑧債務の支払い

遺言執行者は、遺言検認裁判所によって認められた債権者による請求を、不動産の資金を使用して支払う必要があります。

⑨被相続人の納税申告書

被相続人の最終的な個人所得税申告書や相続税申告書を提出することも遺言執行者の仕事です。支払いは不動産の資金から行われ、死亡日から9か月以内に支払う必要があります。

⑩相続財産の分配

上記の手順が処理されて完了したら、裁判所に許可を求めた後、遺言執行者が資産の残りを分配します。

以上が大まかなアメリカの相続手続きの流れです。

当事務所のサービス

いかがでしたでしょうか。「アメリカの相続手続きってこんなにも大変なのか。。。」と思った方も多いかもしれません。

でも、ご安心ください。

当事務所では、上記のような複雑なアメリカの相続手続き代行を米国の弁護士とともに、可能な限りのコスト、費用を削減し、最低限の費用で行っております。

事前のプランニングから最終の相続財産を日本に戻すまで、国際相続のプロがしっかりサポートいたします。

どうか一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

(参考:業務報酬、費用)

アメリカ相続手続き代行サービス:33万円~(※個別見積り)

※米国の弁護士費用、公証実費等は別途となります。

ハワイ州の死亡証明書・結婚証明書・離婚証明書、出生証明書請求代行サービス

国際相続

Q.私の母は、日本人で、アメリカ人とハワイで結婚し、離婚し、最終的にハワイ州ホノルル市で死亡しました。日本では、母の名義の銀行預金や不動産が存在し、銀行預金の相続や相続登記が必要です。このような場合に、相続手続ではどのような書類が必要でしょうか?

A.基本的に、ハワイ州の結婚証明書・離婚証明書、出生証明書、死亡証明書請求が必要です。

アメリカの離島であるハワイ州は、日本のリゾートとして大人気の場所です。

老後はハワイで過ごしたいという富裕層も多く、沢山の日本人が在住しています。

そのため、ハワイ州での死亡により相続が発生することも多いです。

この場合、ハワイのコンドミニアムの不動産相続手続きや日本に銀行預金が残っている場合は、日本の銀行預金の処理が必要です。

この場合、ハワイで日本の戸籍謄本、除籍謄本などに記載されているような情報の記載されている公的証明書の取得が必要です。

ところが、ハワイでは、日本と異なり、戸籍謄本や除籍謄本の制度がありません。そのため、身分関係の変動は、出生、結婚、離婚、死亡の各証明書により証明する必要があります。

もっとも、これで母に他に子供がいないかなどの情報が確実にわかるわけではありません。

そのため、相続の手続では、証明書を請求し、翻訳も添付して、法務局での相続登記を行う際には、「他に相続人はいない」といった上申書等を添付する等の方法で対応するしかないでしょう。

ただ、ハワイの証明書請求は全て英語ですし、州ごとに必要な書類、手続きは異なります。

ですから、日本の戸籍のように簡単に取得することはできません。

このようなケースでは、ご自身で対応することは非常に困難ですので、司法書士だけでなく、アメリカの相続手続きのプロとよく相談されつつことをおすすめいたします。

なお、当事務所では、アメリカの相続手続き代行サービスやハワイ州の死亡証明書・結婚証明書・離婚証明書、出生証明書取得代行を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

(参考標準費用)

1.ハワイ州出生証明書取得代行:3万8千500円+実費

2.ハワイ州結婚証明書取得代行:3万8千500円+実費

3.ハワイ州離婚証明書取得代行:3万8千500円+実費

4.ハワイ州死亡証明書取得代行:12万1000円+実費

5.ハワイ州相続手続き代行サポート:33万円~(個別見積り)

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