香港の相続手続きに関する相談が増加中

1998年以降の金融ビッグバンで香港の銀行で預金をしたり、香港の証券会社で証券口座を開いて当信託や海外の株式に投資する人が増えてきています。

しかしながら、銀行口座を開設したものの、英語ばかりでどうやって使ったらいいのかわからず、そのまま何年も放置して死亡し、死後に家族が相続財産を調査していたら香港の銀行口座や株式が出てきた、というケースが多発しています。

海外口座の開設の際に御自身が亡くなられた後の相続手続きのことまで考えていれば良いのですが、多くの場合、相続のことを考えていないケースが多いです。

香港の相続手続きが多発している金融機関リスト

日本人が香港に財産を残して相続が発生している金融機関で多いのは下記の機関です。香港の口座開設ブームの際に開設したり、香港の駐在員当時の口座がそのまま残ってしまっていることが多いようです。

過去のケースでは、日本人の口座開設者が多いHSBC香港の相続手続き代行やCITIBANK香港の相続手続き代行案件が多いですが、他の金融機関のケースもあります。

(金融機関の例)

HSBC香港、CITIBANK香港、恒生銀行(ハンセン銀行)、BOOM証券、スタンダードチャータード銀行

香港の相続手続きの特徴

では、HSBC香港やBOOM証券等、香港に財産を持つ人が亡くなった場合、相続の手続きはどうするのでしょうか?

まず、日本の場合ですが、一般に、遺産分割協議をして、印鑑証明書や戸籍謄本を銀行に提出します。もしも遺言があれば遺言に従って処理します。

そして、被相続人が遺言で遺言執行者を指定している場合は遺言執行者が遺言に従って相続財産を管理します。

また、特に遺言を残していない場合には相続人が自ら相続財産を管理することになります。

つまり、日本では相続の手続において、原則として裁判所の承認は必要とされていません。(注:相続争いになった場合や遺言の検認のため裁判所が関与することはありますが、これは例外的なものです。)

このように、日本では比較的簡易な手続きで相続が可能です。

そのため、多くの場合、亡くなった方が香港にも財産を有していた場合も、香港の遺産も同様に手続きできると考えて、日本の遺言や遺産分割協議書に従って遺産分割しようとします。

しかし、香港の遺産については、手続きも法律も異なりますので、日本の遺産分割方法をそのまま適用できません。

具体的には、相続手続きを行うには、香港の裁判所による「裁判」が必要になります。

そして、裁判を経た後に、「遺言執行状(Probate)」または「遺産管理状(Letter of administration)」という承認を裁判所から得ない限り、相続財産の管理処分ができないのです。

このような話をすると、理解ができず、困った顔をされるお客様が多いのですが、日本のように簡単な手続きで相続できるほうが世界では少数派です。

こののような違いが出てくるのは、相続財産の移転に関する考え方が違うからです。

例えば、日本の場合は、被相続人の死亡と同時に、相続財産は相続人に移転します。

しかし、香港では、被相続人が死亡した場合、被相続人の財産が自動的に相続人に移るとは考えず、いわば清算財団のような特殊な財産になります。つまり、いったんは相続財産が宙に浮いた形になります。

そして、裁判が終了し、裁判所の承認があってはじめて、相続財産の管理処分が行えるようになります。

この相続財産の管理処分は、人格代表者(Personal representative)が行い、香港の弁護士が指定されることが多いです。

香港の相続手続きの手順

では、香港の遺産相続の場合、具体的に、どのような手続きをとればいいのでしょうか。

これについては、香港の相続では、遺言の有無で手続が異なりますので、まずは遺言の有無をチェックするところがスタートとなります。

そこで以下、見ていきます。

①亡くなった方(被相続人)が遺言書を残している場合

この場合、遺産を管理処分する責任者である「遺言執行者(Executor)」を指定している場合、遺言執行者として指定された人は、「遺言執行状(プロベート・Probate)」という承認を裁判所から得て、遺産を管理処分することになります。

②亡くなった方(被相続人)が遺言を残していなかった場合

この場合、まずは相続人が「遺産管理人(Administrator)」(=遺産を管理処分する責任者)の候補として指定します。

そして、その候補者は、「遺産管理状(レター・オブ・アドミニストレーション・Letter of administration)」という承認を裁判所から得て、遺産を管理処分することになります。

このように、その後の手続が全く異なりますので、香港に遺産を残して亡くなった方がいる場合、まずは遺言の有無を確認してください。

そして、遺言については、「遺言がある場合とない場合では、どちらが早く手続きが進むの?」という質問をよく受けます。

この答えとしては、一般に遺言があるほうが手続きが早くすすみます、ということになります。

ですから、また元気で、香港に財産をお持ちの方は、遺言を作成されておくことをおすすめいたします。

香港の相続手続き費用を節約する方法

上記の通り、香港の財産について相続が発生したときは、原則として、遺言の有無に従い、プロベートの手続かレター・オブ・アドミニストレーションの手続きが必要です。

しかし、この場合は裁判も長期にわたりますし、香港の弁護士費用の相場は一般に日本よりもやや高いです。

そのため、これを一律に強制すると、裁判しても元本割れ、という事態が多発してしまいます。

特に、日本人は、100万円~300万円程度の余剰資金を海外に預けているだけの場合も多いですから、より裁判費用の負担感は大きいです。

そこで、少額の財産の相続の場合に限り、香港の相続制度は例外を設けています。

それが、公的遺産管理人制度です。

この制度の主な条件は次の通りです。

①被相続人の遺産の総額が、HK$150,000以下(約220万円前後)であること

②遺産が、不動産、株式、訴訟が必要な債権的財産の場合でなく、銀行預金や現金のみであること

③外国人(香港人以外)の遺産の相続でないこと

このような条件を満たした場合は、通常のプロベート手続を経なくても、公的遺産管理人が遺産の管理を引き受けてくれます。

なお、公的遺産管理人への管理手数料は、遺産額によって算定されます。

(手数料レート算定表)

①HK$1,000までは5%

②HK$1,000からHK$5,000までは2.5%

③HK$5,000を超える部分については1%

このように、管理手数料は弁護士報酬と比べると、驚くほど安いです。

これは香港だけでなく、イギリスやオーストラリア、シンガポール等の同じ法体系の国では、同様の制度があります。

当事務所のサービス

当事務所では、香港の相続手続きをサポートしています。

現地弁護士と緊密な連携をとり、香港の相続財産がお手元に届くまで徹底的にサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

香港相続裁判サポート:50万円~(個別見積り)

※ケースにより難易度が変わりますので、事前調査、お見積りのうえで業務をスタートします。

業務着手後は、日本側は当事務所、香港は香港の弁護士、という形で、香港の弁護士と協力して業務を行います。

香港の財産が日本に戻されるまで、徹底的にサポートしますので、どうぞ安心してご依頼ください。

(※対応可能な金融機関の例)

HSBC香港、スタンダードチャータード銀行、CITIBANK香港、恒生銀行(ハンセン銀行)、BOOM証券等