フランス人の相続手続きの準拠法はどうなるのか?

日本でフランス人が日本人と結婚して長期に日本で生活し、日本でフランス人が死亡し、相続が発生するようなケースが増加しています。

フランスの相続手続きについて、まず、フランス人の日本における遺言がある場合ですが、基本的には日本で、日本民法に従った遺言がなされていれば遺言は有効です。

遺言については,ハーグ国際会議の「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」(1961年10月5日発効)があり、この条約にはEU加盟の主要国や日本も加盟しております。

また、EU相続規則は,遺言の方式が作成された国の法に適合している場合には,その遺言の方式は有効である旨を定めています。

そのため、日本に就労ビザや永住ビザ等で居住するフランス人は,日本民法に従った遺言をしておけば,遺言は原則として有効となり、それを前提として相続手続きを進めていく形となります。

遺言がない場合のフランス人の相続手続きや方法について

次に、遺言がない場合どの国の法律が適用されるかが問題となります。

この点については、下記のように、「EU相続規則」により決することになります。

EUは,2015年に,EUの相続規則「(REGULATION(EU)No 650/2012 OF THE EUROPEAN AND OF THE COUNCIL of 4 July 2012 on jurisdiction, applicable law, recognition and enforcement of decisions and acceptance and enforcement of authentic instruments in matters of succession and on the creation of a European Certificate of Succession)」(以下「EU相続規則」といいます。)を施行しました。

このEU相続規則によれば,相続に関する準拠法は,原則として,「被相続人が,その死亡時にその常居所を有していた国の法」と定められております。

そのため、日本に最後の常居所を有していたフランス人の相続については,原則として,日本法が準拠法となることになります。

ただ、これには例外があり、例えば、被相続人は,相続の準拠法を定めたい場合は、その選択時の本国法または死亡時の本国法を選択することになっています。

従って,日本に長期に居住するフランス人はフランス法を準拠法としたいときには,遺言でフランス法を選択することが可能です。

一方、遺言に準拠法の記載がない場合、上記の場合においては、準拠法は日本法になります。

総括

以上より、日本に長期居住するフランス人が遺言をする場合には,日本民法に従って遺言をしておけば,形式上はその遺言は有効です。

また、日本に長期居住するフランス人が遺言をせずに死亡した場合には,原則として,日本法に従って,その相続手続きは処理されることとなります。

以上の結果から、例えば日本に長期居住するフランス人が死亡し、日本の不動産や日本の銀行預金の相続手続きを行う場合、多くの場合、日本法に基づき処理が行われることが多いと思われます。

なお、当事務所では、フランス人の相続手続き代行サポートを行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。