近年、

①カナダに居住していた日本人

②カナダ国籍者と日本人配偶者

③日本帰国後もカナダ口座を保有していた方

の死亡により、カナダの不動産相続手続きやカナダの銀行預金の相続手続きが必要となるケースが増えています。

具体的には、下記のような銀行預金の相続手続きです。

①モントリオール銀行 (BMOフィナンシャル・グループ)

②ノバスコシア銀行 (スコシア・バンク)

③トロント・ドミニオン銀行 (TDバンク・フィナンシャル・グループ)

④カナダ帝国商業銀行 (CIBC)

⑤カナダ・ロイヤル銀行 (RBCフィナンシャル・グループ)

カナダの預金相続は、日本と比べて手続き、法制度必要書類が大きく異なるため、事前理解が不可欠です。

カナダの銀行預金の相続に適用される法律(準拠法)

(1)動産は「被相続人の本国法」が原則

日本の国際私法では、「動産の相続は、被相続人の本国法による」とされています。

銀行預金は動産に該当するため、

①被相続人が日本国籍 → 日本法が準拠法

②被相続人がカナダ国籍 → カナダ法(州法)が準拠法

となるのが原則です。

(2)ただし「手続きはカナダ法に従う」

準拠法が日本法であっても、預金口座はカナダ国内にあるため、銀行はカナダ法・州法に従って処理されます。したがって、実際の手続きはカナダの制度に従う必要があります。

カナダの銀行預金相続手続きの特徴

カナダでは、多くの場合、裁判所の遺産管理権限証明(Probate)がなければ、銀行は預金を解放しません。

これは日本の「遺産分割協議書」とは根本的に異なる制度です。

カナダのProbate(遺産管理手続き)とは

(1)カナダのProbateの概要

Probateとは、①遺言の有効性確認遺産管理人(Executor / Administrator)の選任及び②相続財産の管理権限付与を裁判所が行う手続きです。

(2)遺言がある場合

遺言がある場合の手続きの流れとしては、

①遺言で指定された Executor(遺産管理人) が申立て

②裁判所が遺言の有効性を確認

③Grant of Probate が発行される

という流れになります。

(3)遺言がない場合

一方、遺言がない場合のProbateの手続きの流れとしては、

①相続人が Administrator として申立て

②Grant of Administration が発行される

という流れになります。

カナダのプロベートの必要書類

カナダのプロベートの必要書類は下記の通りです。ただし、最低限必要なものなので、ケースによって異なりますのでご注意ください。

(1)基本書類

①死亡証明書(原本)

②遺言書(ある場合)

③Grant of Probate / Grant of Administration (※すでに海外で取得している場合)

④相続人・遺産管理人の身分証明書

(2)日本関係書類(日本人が関与する場合)

①戸籍謄本(出生から死亡まで)

②相続関係説明図

③日本語書類の 英語翻訳

④翻訳証明書(宣誓供述書形式を求められることあり)

州法の違いに注意

カナダは連邦国家であり、相続実務は州法の影響を強く受けます。

特徴
オンタリオ州 Probateが厳格、手続き長期化しやすい
ブリティッシュ・コロンビア州 不動産と同様に預金も厳格管理
アルバータ州 比較的簡素だが裁量あり
ケベック州 民法体系(他州と大きく異なる)

👉 どの州の銀行かが極めて重要です。

Joint Account(共同名義口座)の扱い

(1)Survivorship(生存者帰属)

カナダでは、Joint Account with Right of Survivorshipの場合、死亡と同時に生存者へ自動帰属するのが原則です。

👉 相続財産に含まれず、Probate不要となることもあります。

(2)注意点

日本の相続税ではカナダの財産は、「相続財産」として課税対象になる可能性があります。また、名義だけの共同口座は否認リスクもあります。

日本の相続税との関係

(1)課税判断は別次元

相続税は、被相続人または相続人の居住地、国籍、財産の所在地等によって、日本の相続税が課税されることがあります。

👉「カナダの銀行預金でも、日本の相続税が課税される」ケースは非常に多いです。

(2)二重課税調整

カナダに相続税は存在しません。

ただし、死亡時にみなし譲渡課税(Capital Gains)が発生する可能性あります。

日本の相続税との関係は、税務専門家との連携が必須です。

カナダの銀行預金の相続手続き代行の実務でよくあるトラブル

カナダの銀行預金の相続手続き代行の実務でよくあるトラブルとしては、下記のようなものがあります。

①Probateが必要と知らず、銀行が一切応じない

②州法の違いを考慮せず手続きを進めてしまった

③翻訳の形式が合わず、書類差戻し

④日本の相続税申告期限(10か月)に間に合わない

カナダの相続手続きは日本とは全く異なりますので、日本的な感覚で安易に進めると、思わぬトラブルに

10.専門家に依頼すべき理由

カナダの銀行預金相続は、

①カナダ州法

②裁判所手続(Probate)

③日本の相続実務

④国際税務

が同時に絡む高度な国際相続案件です。

単独での対応はリスクが高く、日本とカナダ双方に精通した専門家の関与が不可欠です。

まとめ

①カナダの銀行預金相続にはProbateが必要になることが多い

②準拠法が日本法でも、手続きはカナダ法

③州ごとの違いが大きい

④Joint Accountは例外的扱い

⑤日本の相続税は別途検討が必要

当事務所では、15年以上にわたり、カナダの銀行預金相続、カナダの不動産相続等の国際相続手続きの代行を行っております。

カナダの銀行預金相続手続き等でお困りの場合は、どうぞお気軽にご相談ください。