ハワイ州の遺産相続手続きを徹底解説

― 日本人が必ず知っておくべき法律・手続き・税務・実務上の注意点 ―

ハワイは、日本人にとって非常に身近な海外地域です。移住、長期滞在、別荘購入、投資、不動産保有、国際結婚などを背景に、ハワイ州に資産を持つ日本人は少なくありません。その一方で、相続が発生した際に「日本の相続と同じ感覚」で考えてしまい、手続きの長期化や思わぬトラブルに直面するケースが多く見られます。

アメリカでは相続は州法で定められており、ハワイ州の相続は日本とは制度・考え方・手続きの流れが大きく異なります。本記事では、ハワイ州の遺産相続手続き(プロベート)を中心に、遺言の扱い、相続人の決定、税務、日本人が注意すべきポイントを約1万字規模で詳しく解説します。

ハワイ州の遺産相続手続きに適用される法律の基本

1.ハワイはアメリカの州であり、アメリカの相続は「州法」が支配する

アメリカには日本の民法のような全国共通の相続法は存在しません。相続は各州の法律によって定められており、ハワイ州内にある不動産や銀行口座、証券口座などの資産については、**ハワイ州法(Hawaii Probate Code)**が適用されます。

重要なのは、

①被相続人が日本国籍であるか

②相続人が日本在住であるか

に関係なく、資産の所在地がハワイ州であればハワイ州法が適用されるという点です。

2.ハワイ州は「コミュニティ・プロパティ州」ではない

ハワイ州は、カリフォルニア州やテキサス州のようなコミュニティ・プロパティ州(夫婦共有財産制)ではありません。これは日本人にとって一つの安心材料でもあります。

原則として、ハワイ州では、財産は名義人の個人財産となります。婚姻中に取得したからといって自動的に夫婦共有にはならないことが重要です。

ただし、共同名義(Joint Tenancy)にしている場合は別扱いとなります。

この点は、日本の相続の考え方に比較的近いものの、名義の重要性が非常に高い点に注意が必要です。

遺言(Will)の有無がハワイの相続を大きく左右する

①遺言がある場合の基本原則

ハワイ州では、有効な遺言(Will)があれば、その内容が最優先されます。日本のような厳格な遺留分制度はなく、比較的自由に財産分配を指定できます。

②有効な遺言の要件

一般的に、以下を満たす必要があります。

a.書面で作成されていること

b.作成者本人の署名

c.原則2名以上の証人の署名

d.作成時に十分な意思能力があること

※自筆遺言(Holographic Will)も一定条件で認められますが、解釈を巡る紛争が起こりやすいため、専門家による作成が強く推奨されます。

遺言がない場合の相続(Intestate Succession)

遺言が存在しない場合、相続はハワイ州法に基づく法定相続となります。

【主な相続順位(概要)】

①配偶者および子

②両親

③兄弟姉妹

④祖父母・叔父叔母 など

ハワイ州法による相続人の注意点としては、以下の点があげられます。

①配偶者が必ずすべてを相続するわけではない

②前婚の子がいる場合、分配が複雑になる

③日本人の感覚と異なる結果になりやすい

そのため、ハワイに資産を持つ場合は遺言作成がほぼ必須といえます。

ハワイ州におけるプロベート(Probate)手続きとは何か

1.プロベートの基本

プロベートとは、裁判所が関与して相続を正式に処理する手続きです。以下のような流れで進みます。

①遺言の有無・有効性の確認

②遺言執行者(Executor)または管理人(Administrator)の選任

③相続財産の把握・評価

④債務・未払い税金の清算

⑤相続人への分配

2.ハワイ州のプロベートの特徴

ハワイ州のプロベート手続きは公開情報となりますので、相続人だけでひっそりと行うことはできません。

また、プロベートの期間は日本の遺産分割手続きとは異なり、非常に長い時間がかかります。最低半年〜1年以上かかることも珍しくない手続きです。

また、弁護士費用・裁判所費用が発生するため、ハワイ州で銀行預金や不動産の相続が発生した場合、多大な費用がかかります。

ただし、少額な資産の場合にこのような手続きを必ず取るべきとすると、相続人に多大な手間と費用がかかることから、ハワイ州には簡易プロベート手続き(Small Estate Procedure)の制度があります。

 ハワイ州の簡易プロベート(Small Estate)手続き

10万ドル未満の一定条件を満たす場合、簡易プロベート手続き(Small Estate Procedure)が利用できます。

【ハワイ州の簡易プロベートの主な条件(概略)】

①遺産総額が一定額以下

②不動産が含まれない、または限定的

この制度を使えるかどうかで、手続きの負担は大きく変わります。

ハワイ州のプロベートを回避できる資産の種類

ハワイ州に資産を有している日本在住の日本人にとってプロベートは大きな負担となりますので、プロベート回避の方策を取っておくことが必要です。

遺産の総額が一定の限度額(動産は10万ドル、不動産は5万ドル)以下である場合、または故人が遺言検認の対象とならない資産(特定の受益者を指定した生命保険契約や生前信託など)を残していた場合、裁判所の手続きの一部または全部を省略できる場合があります。これにより、遺産の種類によっては遺言検認手続きが短縮または省略される可能性があります。

以下の資産は、原則としてプロベートを経ずに相続できますので、これらを活用することを検討してください。

①生命保険金

②受取人指定(POD / TOD)のある銀行・証券口座

③信託(Living Trust)に移されている資産

④共同名義(Joint Tenancy with Right of Survivorship)の不動産

一例としてですが、ハワイの不動産を信託化することは、日本人オーナーにとって非常に有効な相続対策です。

 ハワイ州の相続税・遺産税

ハワイ州にはハワイ州遺産税(Hawaii Estate Tax)があります。

ハワイ州では、一定の非課税枠を超える場合に課税され、連邦遺産税とは別に課税される可能性があります。

アメリカ連邦遺産税は非課税枠は高額ですが、外国人(非居住者)は枠が小さいため、日本人の場合、特に注意が必要です。

日本の相続税との関係

日本人が最も注意すべきポイントの一つが日本の相続税です。

被相続人または相続人が日本居住者の場合、日本の相続税が課税される可能性があります。

ハワイの不動産も日本の課税対象になることがありますし、二重課税調整が必要になるケースも多いです。

そのため、日米両国の税制を理解した専門家の関与が不可欠です。

ハワイ州の遺産相続手続きにおいて日本人相続人が直面しやすい実務上の課題

①日本の戸籍謄本等の英訳・公証・アポスティーユ

→ハワイ州の相続手続きにおいては、大量の翻訳と公証、アポスティーユ手続きが必要で、その労力は膨大なものとなります。

②ハワイとの時差・言語の問題

→ハワイとは時差がありますので、銀行やハワイ州の弁護士とのやりとりが深夜や早朝となることがあります。

③現地弁護士とのコミュニケーション

→基本的に現地弁護士とのコミュニケーションは英語となります。

④手続きの長期化による精神的・金銭的負担

→正式なプロベート手続きを取る場合、1年以上にわたり手続きが続くことも多々ありますし、ハワイは物価が高いので、弁護士費用も高額です。

そのため、手続きの長期化による精神的・金銭的負担も大きくなります。

ハワイに資産がある場合の遺産相続の事前対策としてできること

①ハワイ州法に準拠した遺言作成

②Living Trust の活用

③受取人指定の見直し

④日本とハワイ双方の専門家への相談

相続は「起きてから」ではなく「起きる前」の準備がすべてです。まだまだ先だと思っていても、突然相続手続きが生じることがありますので、早めに対策しておくことが重要です。

総括

ハワイ州の遺産相続は、

①州法に基づく相続ルール

②プロベート手続きの存在

③州遺産税・連邦遺産税

④日本の相続税との関係

といった複雑な要素が絡み合っています。特に日本人にとっては、遺言と信託を中心とした事前対策が極めて重要です。

ハワイに資産を持つ方、将来相続が関係する可能性がある方は、早めに制度を理解し、専門家と連携して相続対策を行うことを強くおすすめします。

当事務所では、10年以上にわたり、ハワイの遺産相続手続き代行のサポートを行っております。

ハワイの遺産相続手続きでお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。