カリフォルニア州の相続手続きを「実務・設計・紛争リスク」の視点から読み解く

― 日本人資産家・駐在員・不動産オーナーのための専門解説 ―

カリフォルニア州の相続手続きについて語る際、「プロベート」「遺言」「相続税」といった基本論点は、ハワイ州や他州の解説と似通ってしまいがちです。

しかし、カリフォルニア州特有の本質的な難しさは、制度そのものよりも、

① 生前の資産設計
② 相続時の実務負担
③ 紛争・訴訟リスクの高さ

にあります。

本記事では、「なぜカリフォルニア州の相続は問題化しやすいのか」という実務的・構造的観点から、専門的に解説します。

 カリフォルニア州相続の最大の特徴は「訴訟リスクの高さ」

カリフォルニア州は全米でも有数の訴訟社会です。相続分野においても例外ではなく、以下のような理由から、相続が紛争化しやすい州とされています。

1 不動産価格が高額で、遺産規模が大きくなりやすい

2 再婚・国際結婚・事実婚が多い

3 子のいない夫婦、前婚の子がいる家庭が多い

4 遺言・信託に対する異議申立てが活発

日本人が関与する相続でも、「想定していなかった親族が異議を唱える」「遺言の有効性が争われる」といったケースが実際に起きています。

カリフォルニア州の相続手続きは「不動産中心」で考える必要がある

カリフォルニア州の相続では、アメリカの銀行預金口座の相続手続きも重要ですが、不動産が事実上の主役になります。その理由は以下の通りです。

①不動産価格が非常に高い

②相続財産の大半を不動産が占めるケースが多い

③不動産評価額がそのままプロベート費用の基準になる

特にロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴ周辺では、「現金は少ないが不動産評価額は数百万ドル」という相続が珍しくありません。

プロベート費用が“想定外に高額化”する構造

カリフォルニア州のプロベートが問題視される最大の理由の一つが、弁護士・遺言執行者報酬の算定方法です。

【法定報酬制度の実務的影響】

①遺産総額(不動産評価額含む)を基準に報酬が計算される

②実際の作業量とは無関係に高額になる

③相続人の手取りが大きく減る可能性がある

日本人相続人にとっては、「なぜこれほど費用がかかるのか理解できない」
という状況になりやすい点が、ハワイ州等、他州との大きな違いです。

カリフォルニア州特有の「Living Trust 前提社会」

カリフォルニア州では、遺言(Will)だけでは不十分と考えられるのが一般的です。ではなぜ遺言だけでは不十分なのでしょうか?

この理由としては、

①遺言があってもプロベートは原則必要

②プロベート費用・時間・公開性の負担が大きい

という点にあります。

そのため、カリフォルニア州では「Living Trust を作っていない=相続対策が未完成」と見なされることが多いのです。

Living Trust が果たす実務上の役割

Living Trust(生前信託)は、単なる節税対策ではありません。

主な機能としては、以下のものがあります。

①プロベート回避

②相続手続きの非公開化

③相続人間の摩擦低減

④判断能力喪失時の資産管理

特に日本人の場合、「相続人が日本在住」「英語手続きが困難」という事情があるため、信託の有無が相続の難易度を決定づけると言っても過言ではありません。

 コミュニティ・プロパティが紛争を生む場面

カリフォルニア州はコミュニティ・プロパティ州ですが、実務では以下の点が争点になりやすくなります。

①どこまでが共有財産か

②不動産購入時の資金出所

③日本の財産との関係性

④婚前契約(Prenup)の有無

特に、日本で形成された資産がカリフォルニア州の不動産取得に使われている場合、財産の性質を巡る争いが生じやすくなります。

 日本人相続人が直面する「距離と手続き」の問題

他州以上に、カリフォルニア州では以下の負担が重くなりがちです。

①手続き期間が長期化しやすい

②裁判所対応・書類量が多い

③弁護士・不動産業者との調整が複雑

日本在住の相続人にとって、「現地に行かずに完結させることが難しい州」
という点も、実務上の大きな特徴です。

税務よりも「管理コスト」が問題になるケースが多い

カリフォルニア州には州独自の相続税・遺産税はありません。しかし実務上は、

①プロベート費用

②信託管理コスト

③不動産維持費

④売却時の税務

といった管理・実務コストの総額が、相続税以上に重くのしかかることがあります。

カリフォルニア州の遺産相続手続きにおける本質的リスク

他州との最大の違いは、「何もしなかった場合のダメージが極端に大きい」
という点です。

相続人同士の対立、手続きの泥沼化、費用倒れ、不動産の強制売却という相続トラブルは決して例外的なケースではありません。

総括:カリフォルニア州の相続は「制度理解」より「設計力」

カリフォルニア州の相続において重要なのは、「法律を知っているか」ではなく、「相続対策として、どこまで事前に設計しているか」です。

カリフォルニア州の遺産相続対策としては、遺言だけでは不十分であり、信託・財産整理・家族関係の整理まで含めた総合設計が不可欠です。特に日本人の場合、日米両国の制度差を前提にした設計がなければ、相続は極めて困難になります。

当事務所では、10年以上のカリフォルニア州の相続手続きのサポートについての実務経験から、制度の解説にとどまらず、「カリフォルニア州の相続にどう備えるべきか」という視点で情報を発信しています。

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