Q.私は、横浜市に在住している45歳の男性です。2年前に父が死亡し、相続財産が2億円程度ありました。税理士さんに依頼し、相続税の申告も期限内に行いました。その後、相続税の調査があり、HSBC香港銀行に2千万円程度の父名義の預金があるので、相続税の修正申告を行ったうえで、追加で相続税の納税をするよういわれました。遺品には残高証明等はなく、知らなかったこととはいえ、相続税の追加の支払いは仕方ないと思います。
ただ、香港の銀行の預金が相続できてないのに、相続税だけ払うことになるのは納得ができません。このHSBC銀行の預金を相続し、日本に送金することはできるのでしょうか?

A.近時は、銀行が通帳や月次明細書を発行するのを停止し、インターネットバンキングやアプリで残高を確認する形が主流になっています。
そのため、海外に被相続人が口座を持っていたり、海外のファンドや海外不動産を買っていても、相続人は口座番号すらわからない、というケースが増えています。
一方、現在では海外資産の把握をする必要性から、CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)制度ができたことにより、国税局が日本在住者の海外資産を容易に把握することができます。
ここでCRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)とは、OECD(経済協力開発機構)が策定した国際基準で、外国の金融機関口座を利用した国際的な脱税や租税回避を防ぐため、金融機関が非居住者の口座情報を自国の税務当局に報告し、それらの情報を自動的に交換する仕組みです。日本を含む100以上の国と地域が参加しており、日本では2017年から導入され、金融機関での口座開設時などに居住地国を申告する手続きが必要になっています。
これにより、相続税の申告後に、税務署から未申告の海外資産の存在を指摘され、追加で相続税を払うことになるケースが増加しています。
今回のようにHSBC香港に銀行預金口座があった場合、日本の遺産分割協議書を作成しても手続きはできません。香港の弁護士を通じ、プロベート(Probate)という相続に関する裁判手続きを取る必要があります。
また、日本の相続法についての専門家の意見書等や大量の翻訳、公証も必要になりますので、日本の行政書士等の専門家の関与も必要です。
そのため、日本の相続より大幅に費用、時間がかかりますが、手続きさえしっかりと行えば、最終的に日本への送金は可能です。
実際、過去にHSBC香港銀行の相続手続きにつき当事務所がサポートしたケースにいても、今までのところ全員が日本に送金を完了しています。
当事務所では、相続税申告後の香港の相続手続きを10年以上にわたり多数行ってきておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。